民事裁判についての解説

主に民事裁判を初めて経験する方のために、民事裁判の流れや、よくある質問とそれに対する回答をまとめました。「わかりやすさ」を優先して「正確さ」を犠牲にした部分がかなりありますので、そのことを前提としてお読みになってください。

民事裁判の流れ

民事裁判の大体の流れは、次のとおりです。
①主張及び証拠の大まかな整理(口頭弁論)
②主張及び証拠の細かい整理(弁論準備)
③証人等の尋問の請求及び陳述書の提出
④尋問
⑤判決
以上の流れの中で、和解に向けた話し合いが行われることがあります。
第1審の判決に不服であれば控訴をすることができ、控訴審の判決に不服であれば上告または上告受理の申し立てをすることができます。

 
 

民事裁判の序盤では、当事者双方の主張と証拠についての大まかな整理が行われます。例えば、貸金請求の事件であれば、当事者の主張の食い違い(争点)がどこにあるのか、「お金を借りたか、借りていないか」が争点なのか、「借りたお金を返したのか、返していないのか」が争点なのかということについての整理がなされ、また、借用書などの基本点な証拠の取調べが行われます。
この整理は、口頭弁論手続(公開の法廷で行われる通常の裁判手続)で行われることが多く、その回数は、2~4回程度の場合が多いです。
口頭弁論期日は、1か月~1か月半に1回程度の間隔で開かれます。

 
 

口頭弁論での大まかな主張と証拠の整理が終わった後、より詳しい主張と証拠の整理が行われます。例えば、お金の貸し借りに至った動機や背景事情(間接事実・状況証拠)についての主張の整理や、このような背景事情を明らかにする証拠の取調べです。
この手続は、非公開の手続である弁論準備手続で行われます。
口頭弁論の1回当たりの時間がせいぜい5分間程度であるのに対し、弁論準備の1回当たりの時間は、15~20分間程度です。
弁論準備の回数は、5回を超えることも珍しくなく、難しい事件だと10回を超える場合もあります。
弁論準備も、口頭弁論と同じく、1か月~1か月半に1回程度の割合で期日が開かれます。

 
 

弁論準備での主張と証拠の整理が終わると、次は証人や本人(原告本人及び被告本人)の尋問に向けての準備が行われることになります。
弁論準備で明らかになった争点を解明するために証人や本人の尋問を行うことになります。この尋問に先立ち、誰の尋問を行うかを決め、また、尋問を行う証人や本人の言い分をあらかじめ陳述書という書面に記載して裁判所に提出するという手続が行われるのです。
尋問は、争点に関係することを証言または供述することができる者についてしか行われません。したがって、当事者が尋問を請求した証人についての尋問が必ず行われるとは限りません。
尋問の請求(人証の申出)と陳述書の提出は、弁論準備の最終盤で行われます。

 
 

尋問は、公開の法廷で行われます(形の上では、口頭弁論となります)。
尋問時間は、主尋問(尋問を請求した側からの尋問)が約20分間、反対尋問(相手方からの尋問)が約30分間、裁判官からの尋問を含め、証人や本人1人当たりの時間は約1時間の場合が多いです。
尋問を行う証人や本人の数は、事件によってさまざまですが、当事者双方と証人1名程度の尋問を行うことが多く、そうすると尋問する証人・本人の合計の数は3名程度ということになります。

 
 

尋問が終わると、予定された証拠の取調べがすべて終わったことになりますので、あとは判決を待つだけとなります。
尋問の後、尋問の結果を踏まえた準備書面を提出するための口頭弁論期日を1回開き、その口頭弁論期日の次の期日で判決が言い渡されることが多いです。この場合は、尋問期日の次の次の期日に判決が言い渡されることになります。

 
 

以上の流れの中で、和解に向けた話し合いが持たれることがあります。
序盤の口頭弁論の時点で、当事者間で事実や法律関係に争いがないことが明らかになった場合(例えば、お金を借りたことについても返していないことについても争いがないような場合)には、すぐに和解の手続に入ることが多いです。この場合は、もっぱら返済金額や返済条件についての話し合いがなされることになります。
弁論準備で主張や証拠を整理する中で事件の実態が明らかになり、事件の実態を踏まえた和解に向けての話し合いがなされることもあります。
尋問が終わった時点では、必要な証拠調べがすべて終わっているため、ほとんどの場合、裁判官は、当事者のどちらを勝たせるのか、自分の心の中で結論を決めています(このことを「心証を取っている」といいます)。尋問が終わった後には、裁判官が、心証に基づいて和解を勧告することがよくあります。

 
 

第1審の判決が不服であれば、高等裁判所(第1審が簡易裁判所の場合は地方裁判所)に控訴することになります。
控訴審の審理は、1回で終わることが多いです。これは、第1審の段階できちんと主張と証拠の整理ができていれば、控訴審で新たな主張や証拠が出てくるはずがないからです。
また、第1審で行った尋問に失敗したからもう1回尋問をするというのではきりがありませんので、控訴審で、第1審で尋問しなかった証人をあらたに尋問したり、第1審で尋問をした当事者本人や証人をあらためて尋問したりすることは、まずありません(尋問を請求しても裁判所が認めてくれません)。
地方裁判所の第1審判決が高等裁判所の控訴審判決で覆される割合は、おおざっぱにいって、10件に1件程度です。
控訴審の裁判では、第1回の口頭弁論の期日の後、その日のうちから、3人の裁判官のうちの1人の裁判官(主任裁判官)主導で和解に向けての話し合いがなされることが多く、この和解手続の中で、主任裁判官が心証を示し、その心証に基づいて和解が成立することも多くあります。主任裁判官が第1審判決の結論を覆すという心証を示し、その心証にしたがって和解が成立することもあるので、控訴審の裁判所(高等裁判所)が第1審の裁判所(地方裁判所)の結論がおかしいと考えている割合は、10件に1件よりは多いと言うことができます。
高等裁判所の控訴審判決に不服があれば、最高裁判所に上告または上告受理の申し立てをすることができますが、これによって高等裁判所の結論が覆されるのは、おおざっぱに言って、100件に1件程度です。

 
 

民事裁判についてよくある質問

まずは、弁護士や司法書士に相談してください。また、裁判までに日にちがなくて弁護士等に相談することができない場合であっても、「答弁書」は必ず裁判所に提出してください。

訴状が届いたら、まず、「答弁書」という書面を作成して裁判所に提出する必要があります。この「答弁書」に間違ったことを書いてしまった場合、あとでそれを訂正することは簡単ではありません。したがって、裁判所から訴状が届いた場合には、まずは、弁護士や司法書士に相談して、アドバイスを受けてください。
また、民事裁判では、訴状が届いているにもかかわらず裁判に出席せず、かつ、「答弁書」も提出しなかった場合は、訴状に書いてあることが全部そのとおり事実で間違いないと認めたことになり、その結果、裁判に負けてしまうこになります(いわゆる欠席判決)。
したがって、裁判まで時間がないといった理由で弁護士等に相談できない場合であっても、「答弁書」は必ず裁判所に提出してください。「原告の請求を棄却する」と書いた答弁書を提出するだけで、とりあえずは欠席判決を避けることができます(裁判所から送られてきた用紙を使って答弁書を作成しても構いません)。

答弁書の提出は郵送で構いませんが、書留郵便やレターパックなど、裁判所へ配達されたことが確認できる方法で郵送し、発送後、少し時間をおいて、裁判所の書記官に電話をかけて、「答弁書」が届いていることを確認してください。

 

訴状に書いてあることがデタラメだと思っても、「答弁書」は必ず裁判所に提出してください。その上で、弁護士などに相談することをお勧めします。

Q1に書いたとおり、裁判に出席せず、かつ、答弁書も提出しないと、いわゆる欠席判決となり、裁判に負けてしまうことになります。したがって、「答弁書」は必ず裁判所に提出してください。
訴状に書いてあることがデタラメであったとしても、第三者である裁判官には、書いてあることがデタラメであるかどうか、当事者であるあなたから説明してもらわなければわかりません。したがって、訴状に書いてあることがデタラメだと思っても、ほったらかしにすることなく、どのようにしたらよいかを弁護士などに相談してください。

 

まずは、裁判所に「答弁書」を提出してください。「答弁書」を提出すれば、第1回の裁判期日には出席しなくても構いません。
第2回以降の裁判期日にも、札幌地方裁判所まで行かずに裁判を続ける方法がありますので、裁判所の書記官と電話で相談してください。

法律上、第1回の裁判期日(第1回口頭弁論期日)には、出席せずにすませることが被告の権利として認められています。ただし、この場合でも、「答弁書」は必ず裁判所に提出しておいてください。答弁書の提出方法は、Q1を参照してください。
第2回以降の裁判期日には原則として裁判所まで行く必要があります。しかし、裁判所から離れた土地に住んでいるといった事情があれば、いわゆる電話会議などの方法で、裁判所に行かずに裁判の手続を進めることができますし、裁判所に行かないまま、和解によって事件を終わらせることも可能です(ただし、和解が成立せずに判決になる場合には、尋問等を行うため、少なくとも1回は裁判所に行く必要があります)。
また、簡易裁判所の事件では、第2回以降の裁判期日も、「準備書面」という書面を提出することによって、裁判所に行かずにすませることができます(ただし、判決になる場合には、やはり少なくとも1回は裁判所に行く必要があります)。詳しくは、裁判所の書記官に電話で相談してください。 
なお、事情によっては、事件を遠方の裁判所(この場合は札幌地方裁判所)から最寄りの裁判所(この場合は東京地方裁判所)に移してもらうことも可能です(この手続を「移送」といいます)。移送の手続を取りたい場合には、弁護士等に相談してください。

 

事件の内容によってさまざまです。

裁判所の統計では、裁判を起こした後、第1審で結論が出るまでの期間(なお「結論が出る」とは、判決が出た場合だけでなく、和解などによって事件が終わった場合を含みます)の平均は、約9か月間です。しかし、結論が出るまでの期間が2年間を超える事件も6~7%あります。

 

裁判に負けても、相手の弁護士費用を支払う必要は原則としてありません。

原告は、裁判を起こす際、訴状に収入印紙を貼って提出し、また、所定の額の郵便切手を裁判所に納めます。第三者を証人として裁判所に呼び出して尋問する場合には、裁判所を通じて、証人に交通費や日当を支払うことがあります。訴状に書いてある「訴訟費用」とは、この収入印紙代や郵便切手代、証人に支払った交通費や日当のことをいいます(「訴訟費用」には、それ以外に、準備書面等の書面の作成及び提出の費用等も含まれます)。「訴訟費用」には、弁護士費用は含まれません。したがって、裁判に負けても相手が支払った弁護士費用まで負担する必要はなく、相手が支払った印紙代等の請求を受けることがあるというにとどまります。
ただし、不法行為に基づく損害賠償(典型的には交通事故による損害賠償)の事件では、相手の支払った弁護士費用の一部の賠償を命じられることがあります。例えば、100万円の物損事故では、この100万円以外に、弁護士費用として10万円の賠償が命じられることがあります。

 

裁判に勝ったとしても、相手に対して自分が払った弁護士費用を支払ってもらうことは、原則としてできません。

裁判に勝ったとしても、相手に対して自分が払った弁護士費用を支払ってもらうことは、原則としてできません。「訴訟費用」は相手に対して支払ってもらうことができますが、この「訴訟費用」には、弁護士費用は含まれないからです。この点はQ5をご参照ください。
相手の請求が根も葉もないものであった場合には、弁護士費用相当額を損害賠償として相手に請求することができる場合がありますが、この損害賠償が認められることはほとんどありません。

 

民事裁判は、弁護士に頼まずに自分ですることもできます。簡易裁判所の事件であれば、弁護士ではなくて司法書士に事件を頼むこともできますし、裁判所が許可してくれれば、家族や会社の従業員に任せることもできます。

外国には、裁判をする場合には必ず弁護士に頼まなければならないという制度を取っている国もあります(これを「弁護士強制主義」といいます)。しかし、日本は弁護士強制主義を取っていません。したがって、弁護士を頼まずに自分で裁判をすることもできます。
なお、簡易裁判所の裁判では、弁護士ではなくて司法書士に事件を頼むこともできますし、裁判所が許可してくれれば、自分の家族であるとか、自分の会社の従業員に裁判を任せることもできます。

 

とても難しい質問です。

「どのような弁護士に頼んだらいいか」という質問は「どのような人と結婚したらいいか」という質問とよく似ています。つまり、正解はありません。
友人や知人から紹介を受けるという方法(見合い結婚のような方法)がよいという考えもありますが、それで必ずよい弁護士に巡り合うとは限りません。
今は、さまざまなところで有料・無料の法律相談を受けることができますので、法律相談を受けた結果、自分が信頼できると感じた弁護士に頼むのがよいのではないかと思います。

 

民事裁判では、国選の弁護士を頼むことはできません。法テラスという団体で弁護士費用の立て替えてもらえる場合がありますので、法テラスや弁護士に相談してみてください。

刑事裁判では、弁護士費用を支払うことができない被疑者や被告人に国が弁護士費用を支払って弁護士をつけてくれる、国選弁護人という制度があります。しかし、民事裁判には、国選弁護人という制度はありません。
民事事件で弁護士費用を支払うことが難しい場合には、一定の条件(「資力が一定の基準以下である」「勝訴の見込みがないとはいえない」などの条件)を満たせば、法テラス(日本司法支援協会)という団体が弁護士費用などを立て替えてくれる制度(民事扶助制度)があります。詳しくは、法テラスのホームページなどで確認するか、裁判を頼もうと考えている弁護士に相談してください。

 

尋問を受ける場合などを除き、必ずしも自分で裁判に出る必要はありません。ただし、裁判に出ることはできます。

弁護士に裁判を頼めば、裁判所での手続は原則として弁護士がやってくれます。したがって、自分が裁判に出る必要は原則としてありません。これが、弁護士に裁判を頼むことのメリットの一つです。
ただし、事件によっては、事件の当事者本人として尋問を受けることがあり、その場合は裁判所に行く必要があります。
また、和解のに向けての話し合いをする際には、当事者本人が裁判に出た方がよい場合も多く、実際に、弁護士だけではなく当事者本人が裁判に出ることはよくあります。
弁護士に裁判を頼んだ場合であっても、弁護士といっしょに自分が裁判に出ることは可能です。ただし、事件の当事者本人が裁判に出ることの良し悪しはあります。例えば、事件の当事者本人が裁判に出ていた場合、その場で、裁判官から和解についての決断を迫られることもありえないことではないですし、当事者本人が失言をした場合には取り返しがつかないことになるという面があることは否定できません。したがって、裁判に出るか否かは、裁判を頼んだ弁護士とよく相談して決めてください。

 

お金が返ってくるとは限りません。債権を回収するには、裁判とは別に、差し押さえという手続を取る必要がある場合があります。

裁判に勝てば、「被告は原告に〇〇円を支払え」という判決が出ることになります。しかし、このような判決が出ても相手がお金を支払わないということは決して珍しいことではありません。
お金を支払ってもらえない場合は、判決に基づいて、相手が持っている財産(不動産や預貯金など)を差し押さえる必要があります。事件の相手が会社や個人事業主であれば売掛金を、事件の相手が会社勤めをしている個人であれば給与を差し押さえることもできます。ただし、差し押さえる財産がないとか、差し押えをしても債権を回収できない場合もあるため、和解によって裁判を終わらせることも珍しくありません。

 

あなたの財産が差し押さえられる可能性があります。勤務先からの給料を差し押さえられることもあります。

詳しくは、Q11をご参照ください。給料などが差し押さえられることを避けるため、多少の言い分があっても、和解によって裁判を終わらせることも珍しくありません。

 

和解を必ずしなければならないという義務はありません。ただし、和解をした方がよい事件があることも事実です。

和解は当事者双方が了承しないと成立しません。当事者には、和解をしなければならないという義務はなく、和解をするもしないも、当事者の自由です。
しかし、裁判に勝っても回収が難しい事件や(Q11をご参照ください)、急いで解決しなければならない事件(判決が出るのを待っていられない事件)、判決がどちらに転ぶか予想が難しい事件など、和解によって解決した方がよいと思われる事件もあります。和解をするかしないかについて、必ずしも弁護士の意見にしたがう必要はありませんが、なぜ、和解をした方がいいと思うのか、その理由を弁護士に質問し、和解をするかどうかは、弁護士とよく相談して、十分に納得したうえで決めてください。

 

清潔感のある服装であれば、どのような服装でも構いません。どうしても気になるのであれば、スーツにネクタイなどといった服装がよいでしょう。

裁判所には、清潔感のある服装であれば、どのような服装で行っても構いません。服装によって、不利な判決になるということもありません。
しかし、尋問にあたっては、ほかに準備しなければならないこと、神経を使わなければならないことがたくさんあり、服装で悩んでいる暇はありません。したがって、服装のことがどうしても気になるのであれば、スーツにネクタイなどといった服装で裁判所に行くのがよいだろうと思います。

 

地方裁判所の第1審判決に納得がいかない場合には、高等裁判所に控訴をすることになります。ただし、差し押さえをされないようにするには、法務局に供託をして、強制執行停止の手続を取る必要があります。

地方裁判所の第1審の判決に不満がある場合には、高等裁判所に控訴をすることができます。控訴の期限は、判決を受け取った日(事件の当事者または代理人である弁護士等が判決を受け取った日)の翌日から数えて14日以内です。判決を受け取ったのが火曜日であれば、翌々週の火曜日が控訴の期限ということになります。
控訴をするには、「控訴状」という書面を提出する必要があり、控訴状を期限内に裁判所に持っていくか、または、期限内に届くように郵送しなければなりません。。

控訴状は、高等裁判所を宛先としたものを第1審の地方裁判所に提出します。例えば、第1審が横浜地方裁判所の事件であった場合、東京高等裁判所宛ての控訴状を横浜地方裁判所に提出します。控訴状には、宛先として、東京高等裁判所と書きますが、実際に控訴状を持っていったり郵送したりする先は横浜地方裁判所ですので、注意が必要です。
なお、簡易裁判所の事件については、例えば、横浜簡易裁判所の事件であれば、横浜地方裁判所を宛先とした控訴状を横浜簡易裁判所に提出することになります。
第1審の判決には、判決の確定前であっても、被告の財産に対して強制執行をすることができるという文言(これを「仮執行宣言」といいます)が書かれていることがほとんどです。したがって、差し押さえをされないようにするには、控訴をするだけではダメで、控訴とは別に、裁判所に対して強制執行停止の申し立てという手続をする必要があります。この申し立てをする場合には、第1審判決で支払を命じられた金額の80%程度を法務局に供託する必要があります。仮に、第1審判決で1000万円の支払を命じられた場合には、800万円程度を法務局に供託することになります。